*都立戸山高校・1956(昭31)年卒業生の資料 画面右の×印で閉じます。 Count = 1843
「東日本大震災」につきまして、衷心からのお悔やみとお見舞いを申上げ、
同時に今後の動向、復旧・復興の歩みには、強い関心をもって
心からの応援を・・・と心掛けるべきかと存じます。
この意味で、同期生の発信をご紹介いたしたく思います。

同期・3C 井野博満さんの御発信

2011年10月22日(土)都立戸山高校の「TOC=トヤマ・オープン・カレッジ」で講演されました。

なお公開資料なので、特に御本人にはお断わりしていない事を申し添えます。

-------------- 「フクシマ原発事故から何を学び、どういう社会を選択するか」 --------------

都立戸山内田校長

「内田校長先生のご挨拶」
TOC=トヤマ・オープン・カレッジに際して、都立戸山高校の東日本大震災への対応実績をお話します。
2011年3月11日は卒業式の代休でしたが、学校には約200名の部活参加者がいました。地震により帰宅困難生徒が発生しましたが、学校には東京都の非常対策物資(毛布など)が用意してありましたので、生徒約100名と教員3名が夜を明かし、さらに都民の避難所として95名程度を受け入れることが出来ました。さらに、その後7月~9月の節電に協力し、電力制限令の要求を上回る25%の節電を達成しました。 これらの具体的な活動実績を踏まえて、井野先生の講演を拝聴し今後に対応したいと思います。

戻るページトップ   

福島原発の事故原因 

「井野博満氏の講演 れじゅめ
 現在の日本は脱原発に進むかどうかの岐路に立っていると思う。社会的に意見が分かれており、脱原発は多数意見と思うが、従来からの推進派も存在する。フクシマ原発の事故原因をどう見るか重要である。地震には対応出来て津波対策が不足だったとか、きちんと管理すれば事故は起こらなかったとの意見がある。
私は管理の不手際もあるが「原子力発電と言う技術」そのものに問題があり、それを認識して「社会的な方向としての脱原発」に進むべきではないかと考えている。

戻るページトップ    

事故の進展プロセス 

「事故の進展プロセス」
Step1:冷却材喪失 Step2:燃料棒破損 Step3:閉じ込め機能喪失 Step4:水素爆発・大気への多量の放射能放出 Step5:炉心溶融(メルトダウン) Step6:高濃度汚染水流出、敷地内高濃度汚染 と事故は進行した。
重要なポイントは、原発が「崩壊熱=発電休止後も莫大な長期に渡る発熱」を生む特殊な技術で、このような分野を、在来の材料・考え方で進めるのが問題と考えている。

戻るページトップ   

 

「Mark I 型原子炉模式図」
今回のMark I 型原子炉の「冷却材喪失」について、地震での配管破損が有った可能性大と考えている。水素爆発が、1・3号機では上方の建屋、2号機では下部の圧力制御室でおきている様子で、こういう違いが生じたのは、地震による配管破断などがあったことの傍証と考えている。 この模式で表した原子炉の中で、今も・今後も莫大な崩壊熱が発生し続けるので、それを冷やし続けないといけない。

 戻るページトップ   

 

「放射能汚染をどれほど大きいと認識するか」
「大気への多量の放射能放出」による、公衆の被曝対応として、「強制移住・希望すれば移住=自主避難」がチェルノブイリなどで実績がある。影響を小さめに伝えたり、放射から逃れる体制をとらなかったり、自主避難費用の補償を行わないのは問題と考えている。

戻るページトップ   

 

「大地は回復するか」

放射能の除染(拡散した放射性物質を何処かに集める)は公衆の被曝を避けるため重要、市民・住民とボランティアが先行し行政・国も動き出したようである。しかし、高濃度の汚染地域を曖昧にしているのは良くない。除染作業で集めた放射性物質を何処に埋めるかが大問題。

戻るページトップ   

 

「放射性物質は原子力村に埋める?」
除染により集った放射性物質の埋設処理場所についてのブラックジョークとして、放射性物質は「原子力村」に埋める、と言う人が居る、「原子力村」の所在地は監督官庁のある中央区・霞ヶ関と東大原子力工学科のあった文京区・弥生町だそうだ。 東京都民はフクシマ発の電力を使ってきたことを想い、応分の負担を担うべきではないか、新潟・フクシマなど電源地区と向き合い過疎地だからと処分場を押し付けるべきではないと思う。

戻るページトップ   

  「各地の原発は安全なのか」
日本は55基の原発を建設した。フクシマ原発事故を受けて、ストレステストで安全性を確認してから再稼動すると言われている。
私は、ストレステストはシステムの検討が主であり、現実には材料特性などいろいろ個別の検討課題があると思う。

戻るページトップ   

  「それでは、すべての原発を即時停止すべきでは?」
即時停止との意見に対して『確かに、総ての原発は(原理的に)危ない=臨界を越えると人間では制御不能、停止しても崩壊熱の対応が数十年以上の長期になるなど』。従って即時停止が望ましいが、社会的な要請があり、現実には、非常に危ない原発とかなり危ない原発を区別するのがよいと思う。

戻るページトップ   

  「世界各国の原発の状況 1」
世界的に原発建設は止まっていない。原発建設を1960年代にくスタートしたアメリカでは、すでに23基を廃炉にした。日本は1970年代建設の原発14基がある。フランス・ドイツもそれぞれ運転中。

戻るページトップ   

  「世界各国の原発の状況 2」
ロシア・運転中27基、建設中10基、計画中7基。中国・運転中11基、計画中26基、計画中10基。インド・運転中17基、建設中6基、計画中8基など。
 核兵器開発を重視する国々(米・仏・ロ・中・印・イラン?・北朝鮮?)は原発を捨てない。核兵器技術と原発技術は表裏一体なのである。

戻るページトップ   

  「金属材料の強度低下が事故を拡大する」
フクシマ第一は、いずれも1970年代運転開始の老朽化原発。週刊朝日記事で、フクシマの現場最高責任者が「操業開始から40年という古さが、地震・津波に負けてしまった・・・建物や構造など全体的にみて、40年は長すぎた。」と発言している。

戻るページトップ   

  「タイタニック号沈没(1912年)も金属の強度低下」
船舶、そして原発圧力容器などの、巨大金属構造物は無限の寿命を持つわけではない、金属は精錬により得られた不安定なもので、常に錆びとなって、土に帰えろうとしている。また、温度の履歴(経年)により強さは低下する、有名なタイタニック号の沈没も冷たい海水温度で船の材料が脆くなり破損したといわれる。
特に原発については『圧力容器の中性子照射脆化=中性子を浴びた金属が時間と共に弱く・脆くなる』と言う問題を重視しなければならない。

戻るページトップ   

 シーボルト像 「エネルギー政策の転換とライフスタイルの選択」
原発推進の理由は、建前として 電気エネルギーが不足する 原発の電気エネルギーはコストが安い とされてきた。
しかし、本音としては 電力会社が核燃料を保有すれば原価に反映できるなど原発は儲かる、 日本政府は核武装できる技術水準と原材料の確保が必要と考えた、だと思う。

戻るページトップ   

 原発とエネルギー問題 「原発とエネルギー問題」

原発とエネルギーについて討議するばあいに、電気が足りなくなるとか、コストが安いのだとか、化石燃料消費を削減しなければならないとか、地球温暖化対策が必要などなど多くの論点があり、切り分けが必要になる。コストについて多くの人が計算を行っているが、原発が低コストとは一概に言えない。

戻るページトップ    

 原発の是非 「原発の是非」

原発の是非について、エネルギーが足りる足りないの問題以前に、危険な技術であるとの視点で考えるべきと思っている。また、日本の現状として、短期間のピーク電力需要を除けば、電力は足りている。

戻るページトップ   

 21世紀の全技術 「徹底検証21世紀の全技術」

化石燃料の問題・地球温暖化の問題などについて、「徹底検証 21世紀の全技術 (現代技術史研究会)」と言う本を出版した。(↓表紙画像をクリックするとアマゾン書店から購入できます)この中で、産業革命によってもたらされた技術を検証している。

戻るページトップ   

 過大なエネルギー消費が生み出した技術的問題群 「過大なエネルギー消費が生み出した技術的問題群」
化石燃料などの使用による過大なエネルギー消費は、原料資源の過度な採掘とそれにともなう環境汚染をもたらしたが、大量生産・大量消費を可能にした。高速大量輸送による巨大都市の建設と活動も可能になった。
しかし同時に、人間の労働から動力への移行・偏重をもたらした。この点から、エネルギーの大量消費システムは、失業に結びついたと思われる。

戻るページトップ   

 エネルギーとライフスタイルの選択 「エネルギーとライフスタイルの選択」

この講演として『原発は廃止に向かう政策を選択する。化石燃料の消費を半分にして地球温暖化問題を解決(但し全世界で行うことが必要)。省エネルギーの社会システムを構築し自然エネルギーを軸にする。そして、人と人との繋がりを重視したほどほどの生活』を提言して結びとします。

戻るページトップ   

 質疑・応答 「質疑・応答(一部)」
総ての専門家が常に中立的な情報を流すと思わぬ方がよい。 一部地域の食品を排除しても輸入品が総て安全とは言い切れないし親子で別のものを食べる生活が良いのだろうか? 個人として茨城の知り合いの農家からの食品は安全と思い食べている。 避難したのち戻れない地域の存在について科学者ははっきり言う必要があり、その現状を踏まえ共感を持って、自分自身が行動することが必要ではないか。間違っても、フクシマ産は食べないなどと言わないのが良いのでは・・・。

戻るページトップ   

 講師近影 「城北会室での講師」

城北会事務所で、 お弁当を前にしてくつろぐ井野講師 (昭和31年卒)。

戻るページトップ   

========================================================================================
 
井野博満さんの他の著作も「戸山表紙ギャラリー」で紹介しています
 

 
 
?
Copyright (C) 2006-2011 戸山高卒50周年記念誌編集委員会 ,All Rights Reserved