『都立戸山高等学校・昭和31年卒業:3年C組の野口 豊さんの著書を紹介します。
- 著作者 : 野口 豊 さま (3年C組)
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- 著作名 : 透視図と透視図法の構造
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- : 遠近法の図法を探る
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- 発行日 ; 2023年10月 6日
- 発行所 ; 学術研究出版
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- 初版は 2016年 9月28日に「透視図法入門」と題して刊行。今回それに大幅な加筆・修正を加え内容に相応しく改題をして刊行する新装増補版です。
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絵画の遠近法の本は水平な平行線が地平線上の一点に集束する図を示し、図法や建築パースの本は作図法やそれによる精緻な製図を示してくれますが、それは「こうすれば描ける」という結論の様なものです。好奇心の旺盛な方は、「何故そうすれば描けるか」その背景の系統だった説明が欲しいと思うでしょう。本書はその答えを求めて書いたものです。現象だけでなくその本質が分かれば透視図を見る視野も大きく開けます。
本書の内容はおおよそ次のようなものです。透視図と透視図法の定義、線形要素の透視図に関する基本的な規則(透視図を描くためのいわば定理)、その規則を利用した各種の図形の透視図の描き方、諸図法に共通の技法であり図法に融通性を与える測点法の詳細、遠近感を生ずる距離の縮尺の直感的な把握、作図の設定と透視図の変化および透視図の持つ特性、介線法と介線の分析、集大成としての三消点透視図、透視図と視覚像の齟齬とその幾何学的な構造(平面に写実画は描けない理由!?)、絵画制作の場で遠近法として透視図法を利用する手段・・・・・・等々。
透視図と透視図法の世界を深く知るとそれは大変豊かな内容と面白さを持ったものであることが分かります。その世界を存分にお楽しみ下さい。
本書は、数年前に出版した「透視図法入門 アマチュア画家のメモ 遠近法の図法を理解しよう」の新装増補版に相当しますが、改めて考察を加えて理解を深め、内容を増補し、章節の構成を変え、文章を推敲して書の完成度を高めました。かつ、その内容が誤解なく読者に伝わるように題名を改めたものです。
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先ず、本の内容の凡そを紹介します:
・この本は、遠近法と透視図の関係と透視図法の定義から始めて、透視図法の全ての根底となる最も単純で基本的な少数の命題を抽出して提示します。
・その命題に基づいて「二消点透視図」、「一消点透視図」等の簡単な作図法を解説します。
・また、三消点透視図も含む全ての作図法に用いられる重要な技法である「測点法」について技法の説明だけでなく、表面からは気が付かない構造を解説し、また、使用方法の拡張を説明しました。この拡張は、介線法の意味を理解し、また三消点透視図に測点法を自由に適用できる根拠です。
・これらの知識に基づいて、平面図を配置せずに自由画風に描く透視図の描き方とその正当性や、「三消点透視図」の手法とその根拠を詳述しました。
・また、「介線法」を紹介します。別の手法のように見える介線法も測点法による二消点透視図であることを理解します。更に測点法における通常の補助線と介線(という補助線)の関係を理解します。(下記のテント―虫はこの過程で生まれました)。
・最後に透視図法は、その定義に拘わらず実質は視覚像の球面を平面に展開する技法であるために、平面画には歪みが生じることを理解します。建築パースの作図範囲の制約や図の修正はこのためです。(地図のメルカトル法は上下方向(緯度)に歪が生じていますが、透視図法は上下左右全ての方向に均等に同様な歪が生じます)。
・更に、その他の様々な考察も含めて、透視図法の全体像を把握できるように考えました。
ここまで理解すれば透視図法の骨まで透けて見える気がするでしょう。以上が本書のあら筋です。
透視図法をこれから学ぼうとする人も、習ったが疑問を抱えている人も、本書で透視図法の根本を理解して下さい。そうすれば、もやもやした疑問も氷解するでしょうし、新しい技法や応用も容易に習得できるでしょう。実務的な製図技法や専門的な知識はこれから先に学んでください。
絵画の遠近法の本を図書館で何となく手にとって見たのが著者にとっての始まりでした。書いてあることはわかりますが、全体的な構造を理解した気がしない。こうなると絵を描くのに必要と言うよりは、幾何学のクイズを解くような好奇心に駆られて、建築パースや図学の本などを何冊か読みました。一消点透視図や二消点透視図の描き方はわかりました。三消点透視図も間単な説明ですが、多分、正しい透視図が描けているんだろうと信じるだけです。測点法や距離点法の技法も分かりました。知識はどんどん増えましたが、何故かその分ますます透視図法の本質が掴めないもどかしさを感じます。この問題を解決するために、自分の理解を整理し系統立ててまとめることにしました。それを出発点として様々な考察を加え遂に透視図法について「納得」することが出来ました。その納得を皆さんと共有したい、これが本書の目論見です。
人の目に見える自然は、常に、透視図的です。どこまで行っても交わらないユークリッド幾何学の平行線なんて、短い距離の近似値としてしか日常的には存在しません。なのに、人は平面画に日々目にするものをどう表現するか、長い間呻吟しました。人が何故見えた通りに描けなかったのか考えて見れば不思議なことです。500年ほど前のルネッサンスの初期からその技法の援用手段として透視図法が徐々に実用化されました。以来、連綿としてこの透視図法は、問題を含みながらも、使われています。
事が視覚像の表現方法という身近な問題であれば、現在も将来も人の興味を引き続けるでしょう。面白いものは古くても新しくても面白いのです。透視図法を自家薬籠中の物にして楽しんで下さい。
下図を「テントー虫」と名付けました。二つの消点、四つの測点、四つの対称測点(本書の用語)の合計十点と、一つの点の透視図を求める四通りの作図を示しています。勿論、この図は遊びです。説明は本書で。
内容の抜粋
本の版面とレイアウトは異なります
はじめに
目次
1-1 遠近法と
1-2 定義
1-3 見え方
2-1 基本則
2-4 応用問題
2-5 用語
3-2 単純要素
4-1 平行補助線
4-4 測点法
4-6 縮尺
4-7 自由画
4-8 介線法
5-2 三消点図
6-1 歪の問題
あとがき
参考文献